任意整理とは?
「任意整理」とは、民事上有効な利息の上限を定める法律(利息制限法)にしたがって支払うべき借金の額を確定させ、その残額のみを支払っていく手続きです。依頼者の方は、認定司法書士・弁護士等の代理人が債権者と結んだ和解契約にしたがって完済を目指します。
代理人が任意整理の手続に着手した時点で債権者からの取立は止まりますので、相談したその日に平穏な生活を取り戻すことができます。
任意整理の要点は以下の4点に集約されると言えるでしょう。
(1) 借金を目減りさせる、あるいは払い過ぎた利息を返してもらう。
利息制限法が定める利率の上限は15~20%ですから、最初からこの利率でお金の貸し借りをしていたものとして負債額は再計算されます。わずか数%の利率の違いであっても、取引が長期間に渡りますと大変な差となって現れます。
例えば、ある業者さんから100万円を年率24%(出資法利率範囲)の利率で借りていたとしましょう。この場合、月の利息が2万円ですから、2万円を払い続けるだけでは永遠に元金は100万円のままです。
ところが、100万円借りた場合の利息制限法上の上限である15%の利率にしたがった場合、初回の2万円のうち7,500円は元金への返済にまわりますので、初回支払後の残高は99万2,500円となります。
こうした利息制限法の制限利率による再計算が繰り返されますと、想像以上に完済は早まるのです。その取引態様にもよりますが、取引が5年を越えていれば借金は半分以下になっていると考えてよいでしょう。
また、取引が10年以上に及んでいる場合は、いわゆる「過払い」と呼ばれる状態になっていることも考えられます。
(2) 今後、将来にわたって発生する利息を0にする。
仮に、今日現在の負債が200万円であったとしても、利息を付けて7~8年掛かりで完済すると400万円前後の支払いが必要になってしまいます。200万円の借金は、200万であって200万ではないというわけです。
この点、任意整理であれば、200万円なら200万円だけを支払うことになります。したがって、まだ借りたばかりで債務の減額が見込めない方や、利息制限法以下の低利率のキャッシングの利用が多いという方であっても、この手続きをとるメリットは十分にあるわけです。
(3) 和解日までに発生した遅延損害金を0にする。
過去にしばしば支払の期日を守らなかった方は、その分の違約金(遅延損害金)をとられても本来文句は言えません。また、代理人や裁判所が介入した後であっても、日々、利息や損害金はかかっています。債権者を説得することによって、これらもカットしてもらいます。
(4) 借金を3年程度の柔軟な分割払いで返していく。
裁判実務などでは、人の我慢は3年が限度・・・というのが一般的です。
任意整理手続きにおける返済期間も概ね3年(36回払い)とされていますが、5年払い(60回払い)の和解契約も珍しくありません。また、ボーナス月に多めの金額を支払うことによって毎月の支払額を抑えるボーナス併用返済や、返済の途中から支払額を増減させるスライド返済等の柔軟なプランが可能なのも裁判所の介入しない任意整理の特徴です。
任意整理の流れ
任意整理手続きの流れは次のようになります。
- 0日(相談日当日)
- 依頼者面談(現在の家計状況について司法書士がお聞きします。)
- 任意整理契約の締結
- 0~2日
-
全債権者へ手続開始通知(受任通知)を発送(窓口が依頼者から代理人に移り、本人への督促が止みます。)
- 1~2ヶ月
- 債権者から取引明細書返送
- 2~3ヶ月
- 利息制限法による再計算 (負債額が確定されるこの段階で、破産等の他の手段に変更することもあります。)
- 和解案提示
- 3~4ヶ月
- 和解契約締結 (完済までのスケジュールを文書にして取り交わします。)
- 3年~
- 債権者へ支払開始 (月に1回債権者の銀行口座へ送金する方法によって行います。店頭やATMでは支払いません。)
- 5ヶ月~
- 完済
任意整理Q&A
Q1.どんな場合に任意整理を利用することができますか?
Q2.任意整理のメリットはなんですか?
Q3.任意整理のデメリットはなんですか?
Q4.任意整理をするとどのくらい借金が減るのですか?
Q5.任意整理を行うと保証人(連帯保証人)に迷惑はかかりませんか?
Q6.任意整理すれば同じように保証人の支払額も減額されますか?
Q7.借りたばかりの借金しかない場合、任意整理をしても意味がありませんか?
Q8.一部の債権者と任意整理することはできますか?
Q9.任意整理を依頼すると取立ては止まりますか?
Q10.家族に内緒で任意整理できますか?
Q11.ギャンブルや浪費が原因の借金でも任意整理することができますか?
Q12.ヤミ金と呼ばれる業者からお金を借りているのですが?
Q13.都内ではなく、遠方に住んでいるのですが、任意整理することができますか?
- どんな場合に任意整理を利用することができますか?
- 任意整理は利息制限法に引き直された後の残額を、債務者の収入の中から3年~5年で完済させる手続きです。この範囲での返済が困難である場合は、個人再生・自己破産等の他の手段を検討することになります。
- 任意整理のメリットはなんですか?
- 任意整理には裁判所が一切介在しません。住民票や戸籍謄本等を収集する必要もなく、代理人に交渉を任せるだけの非常に簡単な手続きと言えます。また、任意整理には決められたルールがありませんので、交渉次第で元金・利息・損害金カットの他、様々な返済計画の立案が可能です。
- 任意整理のデメリットはなんですか?
- 任意整理をすると信用情報機関(ブラックリスト)に事故情報として登録されますので、5~7年程度は新たな借入ができなくなります。ただし、これは個人再生・自己破産等の他の手続を取った場合も同様ですので、任意整理固有のデメリットとは言えません。
- 任意整理をするとどのくらい借金が減るのですか?
- 依頼者によって契約利率や取引の態様が違うので一概には言えませんが、少なくとも20~30%は減額されるのが通常です。利息制限法の上限を超える取引が5年以上あると大幅に減る可能性が高くなります。過払金が発生していて、貸金業者からお金が戻ってくるケースも珍しくありません。
- 任意整理を行うと保証人(連帯保証人(相保証を含む))に迷惑はかかりませんか?
- 保証人をつけている場合、主たる債務者が任意整理をしても、債権者は保証人に請求する権利を失いません。したがって、保証人がいる場合は事前に事情を説明しておく必要があるでしょう。これについては、保証人のついている借金を外して任意整理をする、あるいは保証人を含めて任意整理をするといったことが考えられます。
- 任意整理すれば同じように保証人の支払額も減額されますか?
- 任意整理によって主たる債務者の借金が減額したとしても、保証人には影響を及ぼしません。したがって、やはり保証人がいる場合は事前の説明が必要となるでしょう。
- 借りたばかりの借金しかない場合、任意整理をしても意味がありませんか?
- 任意整理をすると将来にわたる利息がカットされます。約定通りの利息を支払って完済した場合の返済総額と任意整理後の和解総額とでは大きな差額が生じるのが通常です。
- 一部の債権者と任意整理することはできますか?
- 任意整理は裁判所が介在しない手続ですので、一部の債権者だけを整理の対象とすることも可能です。したがって、契約利率の低い銀行ローンや自動車のローン(抵当権設定のローンや保証人を付けたローンなど)を除いて、依頼する価値のある借金だけを任意整理することもできます。
- 任意整理を依頼すると取立ては止まりますか?
- 弁護士・司法書士に任意整理を依頼した後の請求行為は禁止されていますので、任意整理を依頼した旨の通知が届けば債権者の催促は止まります。
- 家族に内緒で任意整理できますか?
- 裁判の内外を問わず、債権者との交渉はすべて司法書士・弁護士が行いますので、依頼者の方が裁判所に行くことはありません。また、官報に掲載されることもありませんので、家族や友人に知られる可能性はほとんどないと言えます。
- ギャンブルや浪費が原因の借金でも任意整理することができますか?
- 任意整理は裁判所を利用しない手続きですので、借金の原因は問題となりません。
- ヤミ金と呼ばれる業者からお金を借りているのですが?
- いわゆるトイチや090金融と呼ばれる業者は、出資法という法律に違反した利息をとって営業しているのが通常です。出資法に違反するお金の貸付けは、契約そのものが無効であるだけでなく、5年以下の懲役や1,000万円以下の罰金を科せられる「犯罪」です。こうした反社会的な契約に基づいて渡されたお金は返す必要がありません(不法原因給付)。当事務所では、高利業者や紹介屋・買取屋などといったヤミ金被害の回復にも全力で取り組んでいます。
- 都内ではなく、遠方に住んでいるのですが、任意整理することができますか?
- 当事務所では、各種の債務整理手続きにつき全国に対応しておりますので、地方にお住まいの方の相談もお受けいたします。